京料理の醍醐味は今この時を味わい尽くすことにある！、京料理 菊乃井 本店

祇園円山、高台寺の緑に囲まれた980坪に広がる数奇屋造りの料亭『菊乃井』は、京料理の可能性に挑む三代当主･村田吉弘さんの名で広く知られている。如月の煮物椀は「丸胡麻豆腐薄氷仕立て」。
すっぽんの出汁で満たされた熱々のお椀には薄氷が張っている。透けるほどに薄い聖護院蕪に見え隠れする絵馬や梅は北野天満宮の梅花祭に因んだもの。その下に潜む草餅の緑は早春の香りをもたらしてくれる。繊細にして豪胆な料理人が巡りくる季節を謳歌する心は、この一椀にも凝縮されている。
庭の佇まい、座敷のしつらえ、女将のもてなし、どれをとってもそれは同じ。東山の山懐で流れゆくひと時にゆったり身を委ねたい。